箱のための家
House for boxes箱がカラフルな日常を演出する。好きな花を飾るように、好きな服を着るように、好きな間取りに変える。居心地のよい場所を自分の手でつくり出す住宅。
A colorful life is revealed by the boxes. You can make your favorite floor plan, just like wearing your favorite clothes or decorating your room with your favorite flowers. You can create your favorite place with your own hands.
箱のための家
01内包された四つ箱
四人の家族が住む家を設計した。この住宅には四つの箱が内包されている。これら四つの小さな箱は、家族一人ひとりの小さな個室であり、ロフトには寝るための場所が用意されている。箱の底にはタイヤが具備されているから、箱はふわりと浮かびながら床を滑走する。小さな箱は、キャビネットのように気軽に運ばれながら、空間を縦横無尽に文節してゆく。住人たちは、生活に応じて住宅の間取りをその都度につくり変えながら、居心地のよい場所を自らの手でつくり出さなくてはならない。要するに、この住宅において間取りはつくられるものであり、はじめから与えられるものではない。
02箱によって生まれる空間
この住宅には固定された間取りがないため、箱によって生みだされる余白の空間が設計の焦点となる。しかしながら、箱は住人たちが自由に動かすものだから、建築家が動かし方を規定してはならない。建築家が住人の自由を奪ってはならない。そこで、住人たちが自らの手で自由な空間を実現するきっかけをつくるべく、閉じられた箱のなかに幾つかの要素を配置することにした。具体的には、キッチン、トイレ、風呂、玄関を兼ねる小さな箱を左右対象に配置することで空間に個性を与えている。また、隅部に据えられたL字型のデスク、空から光を導くトップライト、可動式の大きなダイニングテーブルなどを慎重に配置した。
03関係によって変様する空間
ばらばらに配置された要素は、それらだけでは秩序だっていないのだが、箱を動かすという住まい手の体験によって、まとまった秩序を持ちはじめる。ある時にはキッチンをすごく広くして家族で料理を楽しむ。ある時にはダイニングを閉ざして親密な話をする。ある時には個室を大きくして自由に絵を描く。ある時には天井のなかに小さな部屋を見つけ出す。ある時にはお風呂をリビングがひと繋がりになる。ある時にはすべての空間が玄関へと変貌する。箱を動かしながら、間取りを気軽に変えてゆくなかで、住まい手は空間が変様してゆくこと実感する。
04箱を動かしながら暮らすこと
間取りを気軽に変えられるということ、ただだけのことで日常は美しく変様してゆく。歴史を見るならば、空間をしつらえながら暮らすことは、日々の生活を自らの手で彩りながら生きることであった。箱を動かすこと、あるいは空間をしつらえながら暮らすこと。このような生きられた体験をつうじて、人々は空間を自分ごとにすることができる。この住宅では、箱を動かす体験が直接的に空間に反映され、空間が現われては消えてゆく。これにより、普段の生活で目を向けなかった出来事に遭遇し、まだ気づかぬものが見出されてゆくだろう。日常が美しく浮かびあがる万華鏡のような住宅は、少しだけ世界を変様させる。
Works > House for boxes
期間 2020年4月
種類 建築_住宅
担当 山地大樹
date Apr.2020
type Architecture_House
person Daiki Yamaji
- Books ▷ House for boxes
- Texts ▷ House for boxesで考えたこと
- Works ▷ House for door
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- Works ▷ House for forest
Works ▷ House for boxes