AFTER POST OFFICE.
鏡貼りの筒を持つ住宅
円柱とベットと窓がうつる場面
円柱のあるダイニングを眺める
扉の開いた円柱
棚と花と窓の場面
鏡貼りの筒とベッドの建築写真
鏡貼りの筒のなかのトイレに満ちる光
鏡貼りの筒から漏れ出す光
筒からを空を見上げる
丸い筒の平面写真
筒のある住宅の建築写真
筒のある住宅の建築写真
窓と椅子のある風景
白い外観の建築模型

筒のための家

Hosue for tube

住宅の中心に鏡貼りの筒が挿しこまれる。まわりの風景を敏感にうつしとりながら、風景そのものでもある不思議な筒。筒を中心に居心地の良い場所が生まれてゆく。

A mirrored tube is inserted in the center of the house. The tube reflects the surrounding scenery and is also the scenery itself. A cozy place will be born around the tube.

筒のための家

01日常に気づく装置としての筒

三人のアーティストのための別荘を設計した。山のなかにあるコテージといってよいほどの小さな住宅である。彼らは日常世界を愛する人たちであり、日常のなかでの気づきを作品に変える作風を持っていたから、日常に気づくための仕掛けがあればよいと考えた。そこで、住宅の中心に大きな筒を挿入することにした。筒の表面には薄い鏡が貼られている。周辺の風景を敏感にうつしとりながら、風景そのものにも擬態している筒。窓を開けたり、モノを置いたり、そうした日常な些細な出来事によって、風景がゆらゆらと変様し、様々な気づきが満ちてゆくことを期待した。

02光の筒による内部と外部の逆転

筒は空まで伸びたトップライトとなっている。太陽の光は筒の内部で反射を繰り返し、海の表面のような輝きを持って筒のなかに充満し、住宅を内側から明るく染める。筒の側面に開けられた窓から天井に光が漏れてゆく。筒の内部にはトイレとシャワーがあるが、扉を開けた途端に眩い光が床へと拡散する。この住宅において、外部から内部に光が照らされるのではなく、より内部にある筒から内部は照らされるのである。したがって、明るい光は住宅を内側から包みこむ。こうした内部と外部の逆転によって、住人の想像力が飛躍するのは周知の事実である。

03筒をまわるという体験

風景を反射する鏡貼りの筒、光を内部から照らす筒。これらの筒の効果は美しいものであるが、なにより重要なのは、筒があることによって、住人たちがグルグルとまわりはじめることである。要するに、筒は住人がまわることを誘発する装置として機能する。筒の周囲をまわると、映画の主人公になったかのような連続性のなかで、様々な空間が現われては消えてゆくのを感じる。これにより、普段の生活において目を向けなかった日常、あるいは日常の出来事と遭遇することが可能になり、様々なものに気づくことができる。住人はまわるという体験をつうじて、日常の断片の群れをかき集めるのである。

04リズミカルにまわること

筒をまわるという体験のなかで、様々な日常に気づくことが可能になるが、まわるという体験をより劇的に演出するべく、その連続性を柔らかく切断することを考えた。そこで、天井に対角線状に横ぎる切りこみを入れた。この切りこみは幅狭なトップライトとなっていて、鋭い線状の光が空間にリズムをつける。また、切り込みにはカーテンが吊るされ、カーテンの表面が光で染めあげられると、輝きを纏う布が空間を仕切ることになる。光によって、空間が断片へと切断されてゆくのである。観るという体験をとおして、断片から全体性を現象させる映画のように、まわるという体験をとおして、断片から住宅の全体性が現象する。

05四角い部屋を丸く掃くように

対角線状の切り込みは、この住宅の平面が正方形であることを教えてくれる。丸い平面に丸い円柱があるのではなく、四角い部屋に丸い円柱があること。この平面的なずれが、日常を硬直化させない仕掛けとなる。四角い部屋を丸く掃くことは、家のすべてを掃除しきらず、発見の可能性を残存させることである。そう考えて、平面が正方形であることを印象づけるため、左右対象に大きな開口をもうけた。窓には透明度の低い磨りガラスが嵌め込まれ、周辺の木々はその明瞭な輪郭を失い、曖昧な光と影だけを内部へと送りこみながら、木漏れ日のように風景を揺らしてゆく。自然に呼応した四角い内部は、汲み尽くせない様々な日常を気づかせるに違いない。

06日常を美しく変様させること

住まい手は、筒のまわりをグルグルとまわりながら様々な日常を発見し、しまいには住まい手自身が風景になっていることに気がつく。鏡の筒に自身の姿がうつし出されるからである。要するに、日常を象徴する最たるものは住まい手自身だったのである。住人は住宅のなかにとりこまれ、住宅をとおして変様してゆく。日常は、日常のなかで美しく変様してゆく。住人は、筒をまわるという体験をとおして、空間が現われては消えてゆくのを感じながら、普段の生活で目を向けなかった日常に気がつき、まだ気づかぬものを見出してゆく。日常が美しく浮かびあがる万華鏡のような住宅は、少しだけ世界を変様させるのである。

住宅の外観のアクソメ図
住宅のを展開したアクソメ図
筒のある住宅の平面図
筒のある住宅の立面図
筒のある住宅の断面図
筒を切断した断面図
大きな窓のある断面図
Detail
𓃡  Card
プロジェクトカード

Works > Hosue for tube

𓁿  Information

期間   2020年10月
種類   建築_住宅
担当   山地大樹

date   Oct.2020
type   Architecture_House
person   Daiki Yamaji

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