2本の塔のための家
House for twintower2本の塔を行ったり来たりしながら喜びを発見する。それは旅のようである。2本の塔に囲まれた橋のような隙間が新しい日常を喚起させる。
You discover fragments of joy as you move back and forth between the two towers. It's like a journey. A bridge-like void surrounded by two towers inspires a new life.
二本の塔のための家
01二本の塔を往復する体験
四人の家族が住む家を設計した。この住宅は、二本の鏡貼りの塔の空間と、それらの塔に隙間にある橋のような空間から構成されている。片方の塔にはトイレや風呂や収納などが用意され、もう片方の塔には書斎や和室などが用意されている。住民たちは、塔の内部の階段を登ることで隙間の空間にアプローチするから、自然と塔を出たり入ったりすることになる。要するに、入国と出国を繰り返す旅人さながら、二本の塔を往復する体験が求められるのである。二本の塔を往復する体験を通して、自然や風景や日常が発見されるだろう。
02塔から出ることの効果
塔に囲まれた隙間はふわりと浮かんだ橋のようである。塔の外壁に挟まれたこの空間にアプローチするためには、塔から出なければならない。塔から出るという一枚の体験は、この隙間の空間を外部かのよう錯覚させる。なぜなら、塔から出ると外部がひろがってゆくのが通例なのだから。住人たちは家の内にいながら外に出るという奇妙な感覚を味わうのである。こうした塔の産出する効果によって、隙間の空間は外のような居心地のよさを持ちはじめる。
03塔の隙間の空間
塔に囲まれた隙間の空間には、正面の公園の緑が反射して入り、ゆらゆらと光と影が落ち、日々刻々と移り変わる不思議な風景が立ち現われる。四階の寝る場所にはプライバシーに考慮して高めの腰壁を、三階のテラスには公園に向かって小さな基壇をもうけた。二階のダイニングには、上階のテラスと繋がるトップライトと、植物が植えられるプランターを備えつけた。こうした構成要素は、住人が家を豊かにするきっかけとなる。また、塔の外壁には薄い鏡面パネルが貼られているため、住人の日常と公園の自然が反射して溶け合い、風景が変様してゆくのを感じるだろう。
04浮かぶ床、あるいは机
一階は店舗としても使えるように、ガラス引戸によって開放できるようにした。ガラス戸を開放すると、前面の公園とひと繋がりの空間となる。また、地面は土のままで植物を植えることができる。二本の塔のあいだには床が浮かび、浮かんだ床そのものが大きな机となっている。この大きな平面は、展示が行われたり、演劇が行われたり、食事が行われたり、と様々な使い方を自由に想定できるが、反射した風景と目の前の風景が混ざりあって想像力が満ちてゆく空間になるだろう。
05体験によって現われる秩序
独立した二本の塔と、階によって断絶された隙間の空間。これらのばらばらな空間は、二本の塔に出たり入ったりするという住人たちの体験をとおして、まとまった秩序が与えられてゆく。住人たちは二本の塔を往復する体験をとおして、空間が現われては消えてゆくのを感じながら、普段の生活で目を向けなかった日常に気がつき、まだ気づかぬものを見出してゆく。日常が美しく浮かびあがる万華鏡のような住宅は、少しだけ世界を変様させる。
Works > House for twintower
期間 2021年2月
種類 建築_住宅
担当 山地大樹
date Feb.2020
type Architecture_House
person Daiki Yamaji
- Books ▷ House for twintower
- Works ▷ House for forest
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- Works ▷ House for tube
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