西沢立衛『軽井沢千住博美術館』/ 建築メモ
文章・写真 山地大樹
Karuizawa . 2021.08.21
- 設計者は西沢立衛である。
- UVカットガラスが使用されていて、高低差を解消するようにスラブが傾斜している。
- 傾斜している床に置かれた椅子に、人々が吸い込まれるように座る。
- 傾斜している床によって、丸く開けられれた屋根の隙間から空や隣の家が切り取られ、目の中に飛び込んでくる。
- 展示パネルの壁の端部がH型になっていて、影が生まれている。壁がぼやける。千住博の『The Fall』の滝の輪郭のようである。
- 白い空間に、警備員の濃紺の服のコントラストが映える
- 中庭を介して、あちら側が見える。さっきまでいた場所を外側から見る。
- 皆の笑い声や靴の音が静かに混ざり合い一つの環境になっている。
- 展示パネルが点在していて、庭を散策するように美術館の中を散策する。
- 展示されている滝の隙間と、建築の隙間である中庭にアナロジーを感じる。
- 千住博の『星のふる夜に』という展示と建築の関係は、まるで絵巻やモネの『睡蓮』のようである。散策しながら、時間軸が統一される。
- 菊地敦己による水平に伸びる一本の線のロゴがとても美しい。
- ガラスに映り込む景色が、チラチラと歪んでいる。
- トイレまでの動線が素晴らしく、別荘へ行くかのよう。
- 中庭はオブジェクトとして強く、中にいるのか外にいるか分からなくなる。
- 素晴らしい建築なので、一度は足を運ぶべきだろう。
軽井沢千住博美術館の建築の概要
今回において新しいチャレンジのひとつは、まず壁がないことでしょうか。もちろん展示壁はありますが、意識としては壁はなくて、作品と光、緑だけがあるという感じなのです。全体が壁で空間が切られ、規定されているのでなくて、空間を一次的に定義しているのは、ランドスケープのような屋根や庇、床だということですね。設計者の西沢立衛は、景観条例にが大きな条件になったという。高さ制限が10mであること、勾配屋根を持つこと、50cm以上の軒の出が求められたという。『PLOT 04 西沢立衛』の中で述べられているように、今回の建築の特徴は屋根と床にある。緩やかに傾斜する屋根と緩やかに傾斜する床の隙間があって、偶然そこに絵が飾られているという印象である。それぞれの絵に合わせて、空間の天井高などが緩やかに変化してゆく。天井高は2.4~5mくらいに変化してゆく。床の傾斜は3.5mの高低差を、床の地形に合わせて斜面で消化している。屋根は鉄骨造。また、中庭から光が入ってくる。「庭-空間-庭-空間」と重層されゆくため、内部にいるのか外部にいるのか分からなくなる。非耐震壁は天井との隙間に影ができていて、浮遊しているように見える。建築の詳しいつくられ方は 『PLOT 04 西沢立衛』という本に描かれていて面白い。この本では『十和田市美術館』や『豊島美術館』や『小豆島のパヴィリオン』などのスタディ過程が描かれている。次の章に写真を載せるが、内観は撮影禁止より外観だけの写真しかありませんから、あしからず。美術館の公式のウェブサイトは『軽井沢千住博美術館』のリンクから飛べる。公式のウェブサイトに行くと美しい内部の写真も見ることができる。メインの展示物である千住博の『The Fall』については公式が出している動画を見るのが一番分かりやすい。なにより、滝の境界の表現がとても素晴らしかった。
fig. 軽井沢千住博美術館概要(The Fall) | movie via youtube.com
軽井沢千住博美術館の建築の写真
建築の屋根が自然に溶け込んでいる
内部が透けてみえる
緩やかな勾配の屋根
内部の中庭の上の光が見える
綺麗に伸びる軒
偶然そこにあるような扉
反射した緑と中庭の緑が重なる
裏側の幾何学的な屋根
すらりと伸びる庇
別棟のギャラリー
軒の影が美しい
白い壁に映える椅子
山地大樹 / Daiki Yamaji
memo / 2021
memo / 2021
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