門のためのトイレ
Toilet for gate大きなアーチのドアが風景をうつす。トイレの中に見出された喜びを少しだけ大きくする、通り抜けられるトイレ。
The arched door reflects the scenery. This is a restroom that you can go through and inflates your joy.
門のためのトイレ
01トイレにおける喜び
東京大学の赤門の横にトイレを計画した。トイレとは不思議なもので、用を足す以外にも様々な喜びを見出すことができる。たとえば、新しい情報を集める喜び、違う自分へと変身する喜び、喧騒から逃れて一人になる喜びなどである。トイレで新聞を広げるお父さん、トイレから綺麗になって登場する女の子、しがらみから逃れてトイレに駆け込む会社員を想像すると分かるように、ひとりひとりに物語がある。トイレは喜びに満ちているはずである。この喜びを膨らませなければならない。
02通り抜けられるトイレ
トイレのなかの喜びを膨らますため、通り抜けられるトイレを提案した。使用者は、大きなアーチ状のドアからトイレに入り、トイレにおける喜びを享受して、緑が見えるもう一つのドアから出てゆく。入口と出口を明確に分離することによって、入口と出口が同じである従来のトイレとは異なり、誰が出てゆくかが見えず、プライバシーが保護される。その結果、トイレに入るための心理的な負担が減り、安心してトイレの喜びを享受することができる。
03二つの個室に一つのドアのトイレ
入口と出口の分離よってプライバシーが確保されると、男女のトイレの区別をなくすことができ、男女を分離する入口の空間がなくなった結果、入口のドアがトイレ外観に直接的に浮上してくる。したがって、建築表面のドアをいかにデザインするのかが主題の一つとなる。ここでは、一つのトイレに一つのドアという個人主義的な前提に疑問を投げかけるべく、二つの個室に対して大きなアーチ状のドアを一つだけ設計することにした。分かりやすく言えば、内部には二つの個室があるにもかかわらず、外観においては入口のドアは一つだけにしか見えないのである。
04アーチ状のドアと愛の関係性
二つの個室に一つのドア。この奇妙なドアの装いによって、個室と個室のあいだには相合傘のような関係が生まれはじめる。単に個室が二つ並んでいるという乾いた関係ではなく、個室同士が寄り添いあうような愛の関係が生まれる。要するに、一方の個室にいるとき、もう一方の個室を自然と気遣ってしまうのである。なぜなら、二つの個室は同じドアを持っているから。こうした愛の関係を膨らますため、求心性の強いアーチを半分に分割するデザインとした。実際のところ、アーチ状のドアは片側ずつ開くから、お互いの個室が干渉しあうことはない。とはいえ、自身が使用している部屋だけではなく、トイレ全体を自然と意識するようになることが重要なのである。
05全体としてのトイレを想うこと
トイレ全体を意識すること。自身の使用している個室だけではなく、大きな全体としてのトイレを想うこと。個々にバラバラでありながら、全体としてまとまっているという感覚。この感覚がトイレを大切に使うことに繋がると考えた。通り抜けできるトイレは、誰が出てゆくかが見えないという匿名性がある。だからこそ、互いに気遣う関係が求められるのである。様々なものがバラバラに解体され、一人ひとりが小さな物語を生きる現代だからこそ、全体としてのトイレを想う気遣いを学ばなくてはならない。個室は個室としてトイレなのではなく、全体としてのトイレでもあることを忘れてはならない。
06鏡貼りのドアにうつる風景
全体としてのトイレを想うことは大切であるが、それが象徴性を帯びてくると危険である。そこで、大きなアーチ状のドアに鏡を貼り、東京大学を行き交う人々をうつしだすことで、日々刻々とうつり変わる外観となるようにした。赤門を通り抜けた人々の風景が、トイレのドアにうつりこんで賑わいを演出する。鏡のドアによって残された余白部分は、まるで門の様相をしていることに気がつく。このトイレは一つの門である。トイレという門を通り抜けるという体験を通じて、訪れた人がなにかを発見するきっかけとなると嬉しい。
Works > Toilet for gate
期間 2021年2月
種類 建築_トイレ
場所 東京大学_東京
担当 山地大樹
date Feb.2021
type Architecture_Toilet
location The University of Tokyo_Tokyo
person Daiki Yamaji
- Coming soon
- Works ▷ Toilet for grid
- Works ▷ Clocktower for wall
- Works ▷ House for tube
- Works ▷ House for border
Works ▷ Toilet for gate